恋せよ乙女!パープルーム大学と梅津庸一の構想画展ーワタリウム美術館
久しぶりの投稿となってしまいましたが、今回は一風変わった展覧会を。ワタリウム美術館で会期がたった二週間のパープルームの展覧会。
パープルームとは、相模原にある私塾を拠点をして多くの入塾希望者や、評論家、学芸員などが訪れる不思議な共同体。グループの代表でもある梅津庸一さんの住む場所であり、皆そこで、議論しながら作品を作っている。
ワタリウムの壁にはたなびく大きな旗が。
実は今回、授業の補講の一環で先生とその授業を受けている生徒(今日は三人)の集まりで行った。
この授業は日本近代美術史で、中でも洋画について授業で取り上げている。展覧会タイトルともなっている「構想画」は東京美術学校で西洋画科の教授を務めた黒田清輝が日本に普及させようとしていた言葉。パープルーム代表の梅津さんはこの言葉や、黒田が根付かせた日本の美術教育に疑問を持ち、作品に繁栄させている。
現代美術と日本の近代美術は一見関係のないようにも見えるが実はかなり密接に絡んでいる。授業で勉強していることにもかなり重なる部分があるので、先生は美術館見学をここに選んだとおっしゃっていた。
フライヤーを持つ金太郎みたいな髪型の私。ちなみに、この美術館はアプリみゅーぽんと連携を組んでいるので割引が効き、500円で入ることができた!感激!!
今回の見学は、なんと梅津さん本人が一つずつ作品解説をしてくださる豪華な授業。実際に、会期中はワタリウムがパープルームの活動拠点となるので、メンバーの皆さんが自分の家のようにくつろいでいる。お客さんは自由にパープルームの皆さんと話し、作品解説を受けることもできる。作家と鑑賞者の距離が近い!普段は携帯をいじっていたり座って何かを見ていたり、梅津さんが差し入れのウィダーインゼリーを飲みながら解説してくださったりと(美術館なのに!笑)いつもの美術館では味わうことがない変な空間だった。作品の上に靴下やおパンツがぶら下がっていたが、これらは作品ではなく、寝泊りしている梅津さんの洗濯物であった。なんて飾らない人なんだ・・・・。
4階は梅津さんの個展、2、3階がパープルームの共同展という構成である。建物自体、それほど大きくはないので、私達のグループだけでも部屋がいっぱいになる。そんな空間の中に、パープルームの作家さんたちの作品が処狭しと並べられていた。エレベーターの壁一面にも言葉や、写真が大量に貼られており、ワタリウムがパープルームに占領されてしまったみたい。
実際に作品制作をしている人の話を聞くことって中々ない。作品の話だけではなく、普段の生活なども話してくださり楽しかった。
共同生活をしたり、部屋の出入りをしているが皆さん、特別に仲が良いわけではないそうだ。(こういうシェアハウスしてる人ってよく家族同然☆みたいなキラッキラなイメージ、ありませんか)むしろ、お互いに嫌いらしい。笑
パープルームの中で従来の美術教育から離れた環境で、互いに議論を交わしながら生活をしていく中で生まれる作品は独特で発想が面白い。植物に刺青が施されたものや、複製された皮膚に描かれた絵、ナビ派を尊敬しているという方の絵(この方の描く漫画がまたおもしろく、ペンの素朴なタッチが素敵だった)そして、ゲルゲル祭の部屋の中にいた智輝さんの作品。この方、高校中退を経て、上京して現在パープルームで作品を制作しているという。
作品の中には、幼少期の心情や自分のまっすぐな思いが綴られた言葉もあり自分よりも若い子がしっかりと自分の意見を持っていることに驚いた。人と話すのも苦手だったらしいが、今回の展覧会では部屋に入ってきたお客さんに説明を積極的に行っているそう。美術の大学に行くにはお金も試験も準備が大変だ。その点パープルームは、予備校に行く必要もないし、お金も共同生活なので大学ほどはかからない。智輝さんのように、十代だって入ることができる。大学を経由しなくたって、作品を公開する場はいくらでもあるのだから、今後このような団体がもっと増えれば良いのに、と梅津さんは話す。
梅津さんの作品。黒田清輝の《智・感・情》のオマージュ。本来だと裸体の女性が同様のポーズをしているのだが、あえて自身の裸体を作品に当てはめた。背景も本当であれば金色なのだが、ここでは淡い青色。これは、梅津さん自身のコンプレックスでもある、お尻に未だ残る蒙古斑の色だという。(今回展示されている作品には、そんな蒙古斑の色を使った作品が多い。)
先ほどは、黒田に関して、否定的であったのに、なぜ黒田の作品のオマージュを制作をしたのかが気になった。憧れなのか、反骨なのか。質問をしたところ、確かに否定的な部分もあるが、結局は自分も黒田の成分が入っている(日本の美術教育を受けている)ので愛憎の意味合いがあるという。昨今で活躍する現代アートの作家たちも元を辿れば、皆黒田のDNAを受け継いでいるのだそうだ。
そう考えると、智輝さんや、パープルームで正規の美術教育を受けず自由に制作をする作家さん達は、黒田の美術教育を受け継いでいない。これから期待される新たな美術の枠組みを創り出す人となるかもしれない。教育を受けていないからといって、アウトサイダーというわけでもない。パープルームという不思議な共同生活の中で培われた表現力が力となって作品が動いている。非常にエネルギッシュな空間であった。
梅津さんは最後に学芸員や評論家になりたいのであれば、作家が言ったことへの反対意見を積極的に言わなくちゃ!と言われた。確かにそうだ。作家が言ったことに関してそのまま鵜呑みにしてはいけない。自分の言葉でおかしいと思ったことを発言すれば、かえって互いに良い刺激となるだろう。
説明がなければ解釈も難しい展示であったともいえるが(常時、パープルームの皆さんがいるので解説は聞ける)話を聞いて、理解できるととても楽しい。そのためには、もっと自分の知識の輪を広げなければならないとお尻を叩かれたような気持ちになる展覧会、そして梅津さんとの出会いでもあった。
美術を語るって難しい・・・!もっともっと頑張らなくては!私よりも年齢が若い子だってあんなに頑張っているんだから!!