ブリューゲル「バベルの塔」16世紀ネーデルランドの至宝-ボスを超えて展ー東京都美術館
東京都美術館で現在開催中で話題のバベルの塔展。美術館の窓にはボスの怪物たちの装飾が施されている。
実は、元々そこまで行く気はなくてスルーしていたけれど、大好きな某美術館をぶらぶらする番組で取り上げられているのを見てじわじわと興味が出た。やっぱ五郎さんの説明って明快で分かりやすくて、すごい。この番組を見てから美術館に行くと、キャプションには書かれていないことも知っている上で鑑賞するので、いつもよりも充実したものになる。
平日の午後に行ったのだけれど、かなり会場内は混んでいた。チケットを買うのも一苦労な感じ。本当は上野駅のチケット売り場で買いたかったんだけれど、割引のアプリが美術館内でしか適応されないということで、5分ほど並びチケットを購入。
朝イチで行けばよかったのかもと後悔しつつも、その日は午前中に免許証の更新で神奈川県の二俣川に行き、その足で上野、そのあと大学に行く大忙しなスケジュールだったので時間が確保できただけでも良かった。
最初の展示室に入ると、16世紀ネーデルランドの彫刻が並べられている。このころの西洋の彫刻そのものをあまり見たことがなかったので(石膏像ならよく見るけれど)新鮮な雰囲気であった。どの彫刻もそれほど大きくはなく、服のしわにまで細かく彫られている。
けれど、彫像は360度全て彫られているのではなく、視界に入る180~240度ほどしか彫られていないものが多かった。元々、何かにくっついていたのか、それとも彫像とは「そういうもの」だったのかが気になるところ。もし後者だとしたら、日本の仏像は360度手を抜かずにすごいなあ~~と思いを馳せながら、大好きな仏像とひたすら比較をしていた。
ブリューゲルは保存状態が非常にデリケートなために、海外では展示するのが厄介な作家の一人だそうだ。その上、現存する油彩画が40余点ほど、というのも驚きだ。個人的にはもっと作品数のある作家だと思っていた。
私の中でのブリューゲルってまさに「農民画家」のイメージ。「人をいっぱい画面に入れる人」で、一種の風景のようにも見える絵には、細かい描写に感心しつつも、そこまで興味が持てなかった。バベルの塔と言われても正直そんなにピンと来なかった・・・
けれど、ヒエロニムス・ボス風な奇妙な怪物も多く作品と残していたことや、自身がバベルの塔の迫力を身をもって体験したことから、私の中でのブリューゲルの見る目がかなり変わった。
今回のブリューゲルの展示では、従来の私がイメージしていた、いわゆる「風俗画」の展示はあまりない。ボス風の奇妙な怪物を織り交ぜた作品や聖書の一部を描いたものが多く、ほとんどが版画で、油彩画の展示もバベルの塔くらいだった。(他の画家の油彩画はたくさん展示されていたけれど)
今回の目玉はバベルの塔だけではない。あの、ヒエロニムス・ボスの作品も来日している。五郎さんいわく、バベルよりもボスが来たことに感激していたと述べていたほどだ。五郎さんが言うんだから、間違いない。(単純)
《放浪者(行商人)》と《聖クリストフォロス》の2点である。見れば見るほど謎が謎を呼ぶ作品。《放浪者》に描かれた男性はなぜスプーンを持ち、左右で履いている靴が違うのか。《聖クリストフィロス》は一見聖書の一部のように見えるが、周りの背景をよく見ると、ボスの得意とする、奇妙な怪物や、木につなげられた壺の家、小人等が描かれている。何の意図があって作品となったのかボスが生きていたら、聞いてみたかったな。
東海大学でフランドル絵画を教えている先生が私の大学に教えに来ていて、授業を取ったことがある。ボスの《快楽の園》や、《七つの大罪》についてはかなり勉強した。フランドル絵画に関して権威があり、情熱を持って研究しているのと同時に、かなり個性的で見ていて飽きない先生だった。ボスの絵画と聞いて、脳裏にこの先生がチラチラと出てきてしまう。今取っていたら先生に質問しに行ったのになあ~。
肝心のバベルの塔の作品は予想以上に小さいと聞いていたが、フランドル絵画の大きさのイメージからしたら、まだ大きい方なのではないかと思った。家の中に飾るサイズを描くのがフランドル絵画の特徴だから、もっと小さめな作品が主流な気がする。
この作品の感想を一言で言うと、とにかく細かい。塔の左側にははしごなんかも描きこまれているのだが、近くでじっくり見たい人は歩きながらの鑑賞になるので中々細部までじっくりと見ることができない。遠くから立ち止まった状態で鑑賞することも可能ではあるが、細部はやはり見えないので、単眼鏡を持っていくことをおススメする。(今回の展示は細密描写が多いので、単眼鏡が活躍する機会は多い)そびえたつ塔の迫力も中々なので、まずは並んで近くで鑑賞し、後で後ろから単眼鏡でじっくりと見る作戦で鑑賞を楽しんだ。
これは、写真OKの大きなパネルより。エッフェル塔よりもずっと大きいんだって。かつて全人類が住んでいたくらいだもんな~そのくらい大きくなきゃな~
お客さんに気持ち悪がられた、バベルの塔公式キャラクターのタラ夫。何も考えていなそうな目で口から何かを吐いてる。こんなゆるキャラ、みうらじゅんが飛んできそう。
無理をしてまで予定を空けて観にいけて良かった展覧会。
今月は何かと忙しく、今回のように一日にスケジュールを詰め込むような一日を過ごしていたので6月はあっという間だった。来月からは博物館実習があったり、美術館のサポーター活動もいよいよ本格的になったりするので体調管理には気をつけながら隙間を見つけて、美術館に行こう。