おうちで美術館③ 過去のイチオシ展覧会を振り返る
過去にブログには載せてはいなかったけれど、面白かった展覧会を紹介します。
過去である上、巡回もない展覧会なので、正直、美術館の宣伝にもならないけれど、おうちでできること、ということで楽しかった美術鑑賞の思い出を共有しつつ、記憶の整理にお付き合いください。
今回は2019年11月2日から12月28日まで千葉市美術館で開催されていた
「目〔me〕非常にはっきりとわからない」展です。
この展覧会、当時非常に話題になりましたね。
誰が言い始めたのか分かりませんが(私は見に行った大学の先生から言われましたが)、見に行った人々がネタばらしをしてはいけないということで、SNSが発達している昨今にも関わらず、どんな展示かは知らずに行きました。
余談ですが、電車に乗る時間が一時間以内だと、わりと思い立った日にすぐ出かけるほど抵抗はないのですが、住んでいる地域から、千葉市美術館は自宅から遠く電車だけでも1時間30分ほどかかるので(更に千葉駅からもちょっと距離あるしね)、行く時には気合をいれていかないといけません。
私にとっての首都圏3大
「いざ行く時には気合を入れていかなければならない美術館」は
千葉市美術館・府中市美術館・川崎市岡本太郎美術館です。
どの館も大好きですが。
それはさておき。
この展覧会を見るにあたり千葉市美術館のホームページも確認したのですが、展示の概要を読んでもよく何も分かりませんでした。笑
巡回もないので、先に行ったことのないのために説明をしますが、写真撮影はできなかったので、言葉で説明しますと、千葉市美術館の展示室は中央区役所との複合施設で、7、8階が展示室にあたります。
エレベーターでとりあえず、どちらか好きな階に上ると、展示室や通路、トイレまでにも養生テープや青いビニールシートが覆われ、展示の準備作業をしているような光景が広がります。
床も壁もビニールシートで覆われていて、時折、展示途中と思われる屏風やインスタレーションもありました。学芸員さんと思われる人が屏風を開いていました。
足元には丸まったガムテープや、軍手、釘の入った箱など普段の展示室なら絶対に置かれていないものがあちこちに落ちています。
その様が7階に行っても8階に行っても全く同じ光景が広がっているのです。転がっているゴミや作業用の台の位置までも7、8階全く同じ。
置いてある物体全てが意味深に見えてくる。
壁に描かれた謎の記号は別の階にはなかったはず!と思って「答え合わせ」をしていくうちに、自分が今、7階にいるのか8階にいるのか分からない状況に陥ってしまうのです。
日常生活の中であれほど、床に落ちているゴミを観察したことがあっただろうか。
「確か、8階にはなかったはず・・・」と思って8階に上がると「あれ、さっき確かめたはずだけど、このゴミ同じ色だったっけ?」と再度7階に確認しにいく繰り返し。
途中で別の何かが気になって、結局ゴミの色忘れているし私・・。
この展覧会を見たことで、普段自分がどれだけ物をしっかり「観察」いなかったのか思い知りました・・・・。
美術館巡りが日課であったから「見る」ことは得意なはずだったのに・・・・。
人間がなんとなくで物を見ていることに気付かされる展覧会でした。
当時図録はまだ完成しておらず、1ヵ月後に自宅に郵送されました。
それがこちら。
図録も個性的だった・・・・。こんな図録見たことない!!!様々な大きさの紙が使われています。
写真も論考もたっぷり。
紙をよく見ると、切りっぱなしになっている!
中身は今回の展覧会の概要だけでなく、これまでの過去の活動についても掲載されていて、「目」の全貌を知ることができる一冊になっていました。
現在、千葉市美術館はリニューアルで休館中ですが、この図録は発送作業を続けているそうです。
リニューアルに向けて準備はしているそうですが、何せこのコロナの大流行。
しょうがないとは思いつつも、余儀なく中止となった展覧会やアーティストの活動が数多くあります。
早く、収束してどこの美術館も安心して開館できる日が来ますように。