「日本美術の裏の裏」展@サントリー美術館
サントリー美術館のリニューアル展が数回に分けて開催中。
今回は、「日本美術の裏の裏」展がとても良かったのでご紹介します。
コロナ渦で活動が制限され美術館に行く頻度も減ってしまいました。そんな数少ない展覧会巡りの中で、今年のマイベスト展覧会にランクインしそうなのが今回の展示。
展示内容は、全てサントリー美術館の所蔵品で構成された収蔵品展。
これまでの(リニューアル前)サントリー美術館の展示はどちらかというと、全て作品を借りての展示が多い印象があった。
けれど、今回の展示を見て、こんなにサントリー美術館は良いものを持っていたなんて!
と気付いた。
今後も定期的に所蔵品展をやってほしいくらいに!
そして、展示の仕方がとても良かった。
美術品の見方を改めて考えさせられる作品解説に感服。
美術館の中にいると、どうしても展示物を「作品」として見てしまう。
けれど、今回の展示で、展示の仕方や解説文なんかを読んでいると、美術作品が生活用品として使われていた時の情景を思い起こさせ、美術品の本来の在るべき姿を考えながら見ることができた。
屏風にはなぜ、野原がずっと続く武蔵野の風景が描かれているのか。
室内に飾ることで、お庭からこんな景色が見えたら良いのに・・・と注文主がインテリアとして求めたことだってありうる。
屏風の本来の役割は「風除け」だけれど、武蔵野に広がるススキが風に吹かれて、そよそよと揺れ動く姿を連想させることもできる。
展示室には、襖があって、まるで室内で屏風を見ているような気分になった。新鮮でとても心地の良い演出。
劣化や破損に細心の注意を払って展示されている美術館の作品は、未来の保存のためには致し方のないことだけれど、本当の使い方ではないのかもしれない。
江戸時代に詳しい杉浦日向子さんも著書の中で、「浮世絵は額に入れてみるものではない。元はといえば、手に取ってみるものだから、美術館の展示は本当の浮世絵の良さを引き出せていない(意訳)」と述べている。
作品が作られた当時は、屏風は風除け、部屋の仕切りであって、浮世絵は広告、ポスターだった。それが今では全て「美術作品」であって、一般の人の手に殆ど触れることなく陳列されている。
展示作品を客である私が触ることはできないけれど、展示室に書いていた作品解説のように「自分だったら、どこに飾るか」「工芸品の前後ろは自分で決める」と、自分が主体的に作品と向き合っていきたいと思った。