電線絵画 小林清親から山口晃まで-練馬区美術館
ネットで話題の「電線絵画展」。
自宅から練馬区美までは「行けなくもないけれどちょっと遠い美術館」の印象なので、しりあがり寿さんの「回転展」以来の美術館訪問でした。
今回は、テーマが非常に魅力的で「どうしても行ってみたい!」と思った数日後には朝からそれだけを考えて行ってしまった展覧会です。
展示のテーマはタイトルの通り「電線」。
電線が日本に誕生した幕末(あくまで実験的に作られたのが幕末なので、世間一般に広まるのは明治期になってからです)から現代まで
描かれた「電線」の表象に迫った展示。絵画資料もさることながら、電線の歴史も学べます。
絵画を見ていて、電線を意識したことはあまりなかったけれど、浮世絵と洋画でこんなにも電線に関する捉え方が異なっていたとは驚きでした。
流行りものはいち早く絵の中に取り入れるのが浮世絵。
電線が町中に登場し始めた頃にはすでに、絵の中に電線をばっちりと入れていました(開化を象徴するモチーフでもあったしね)。
一方、洋画家が風景画の中に電線を取り入れるのには当初抵抗があったようで、電線を取り入れるようになったのはもう少し後になってから。
画家と浮世絵師の「電線に対する喰いつき方の違い」みたいな対比が面白かったです。
一階の会場には、電線絵画の枠を超えて碍子(がいし)そのものが展示されていたのも面白かった。碍子とは、電線を電柱に固定する部品のこと。
あれほど身の回りにあふれているのに、碍子をまじまじと間近で見る機会は殆どないので新鮮。そして、碍子と日本画をセットで見る機会も今後あるかないかの組み合わせ。
見慣れたものをテーマにしながらも目の付け所が今までにない展示。なにか新しい物を作りだすとき、目新しいものばかり考えずに、身の回りの自分に
関する些細なことから構想を練る、アイディアづくりとしても非常に勉強になる展覧会でした。