タイ~仏の国の輝き~-東京国立博物館 平成館
現在開催中のタイ展。仏像が好きな私ではあるけれど、普段は日本の仏像ばかりを見ているので海外の仏像を間近で見ることはあまりない。秋には同じ会場で大規模な運慶展も開催されるので、今年のトーハクは仏像にアツイ!!!運慶を見る前に、海外の仏像もじっくり見てみよう!と思いトーハクへ。
今回のお目当ては、仏像だけではない。大好きなみうらじゅんさんといとうせいこうさんコンビがタイ仏像大使となり、グッズの監修や音声ガイドに登場する。仏像を「楽しい!!」と思わせてくれるきっかけになった二人が登場するならば行かないわけにはいかない。
頭がタイでいっぱいな中、トーハクを最初に訪れた時には、振替休日で上野公園がしーーーんとしている時に来てしまった・・・・。海の日の次の日・・・。その時は上野以外もほかの美術館はどこも振替休日で休みだった・・・。
気を取り直して4日後に再び上野へ(どんな時でも下調べが必要だな)。ちゃんと空いていました。良かった良かった。
普段、音声ガイドなんて絶対に借りない主義。高いし、自分のペースが狂うから。でも、今回の音声ガイドがみうらじゅんさんといとうせいこうさんと記載されているのを発見してしまい、即決で借りちゃった。
人生で二回目の音声ガイド(1回目は、無料だったハルシャ展)。
秋の「禅展」ぶりの平成館。平日の昼間だったので人はそんなに多くなく、快適だった。中年層が多かったイメージ。そもそも集客数もそんなに多くは見込んでいないだろうな。本館の方が混んでいたくらい。
ちゃんと意識してタイの仏像を見たのは初めてだったけれど、日本と随分違う顔をしていらっしゃる。顔が縦長ふっくら卵形。体がしなやか。後、背筋がよく見える。胸部を前に突き出したかのような造形なのかな?それとも、背中を反るような造形だからかな?異国顔の仏像も中々見応えがあって素敵だった。日本がずっしりというイメージならば、タイの仏像は華奢な感じがした。
動物が仏様の使いとして一緒に彫られることはよくあるけれど、今回は蛇=ナーガがくっついているものが多かった。いとうさんは日本のヤマタノオロチを彷彿させるともおっしゃっていたけれど、私は弁才天にもよく蛇がくっついているなあ、と。弁才天は水の神様で、蛇も水に関係するだなんて言われているから、豊穣とか水の豊かさの願いが込められている可能性もある。
中には右半分が男(破壊と再生のシヴァ神)と、左半分が女(パールバティー)の不思議な坐像も。左側はふっくらとした胸があり、顔にはシヴァの第三の目がついている。体半分ずつを男女の体のつくりで変えるだなんて、おもしろいこと考えたなぁ。でもすっきりまとまるように作られていてきれいだった。
仏陀遊行像もおもしろかったな。これはあまり日本ではみないかもしれない、仏様が足を一歩出した動きのある像だ。天界の階段を降りている様子を示しているらしい。音声ガイドでは、みうらさんが「ウォーキングブッダ!!!!!」と興奮した様子で話されていて、見仏記ファンはまさにこういうのを求めて音声ガイドを聞いていたようなもんだったね。
見仏記とは、みうらさんといとうさんが全国(時には海外も)を回って仏像巡りをする本のことで、いとうさんが主に執筆をして、みうらさんがイラストを担当している。この本が本当に楽しくて、仏像の新しい見方を導いてくれた、いわば私のバイブル本と言ってもおかしくない。
仏像以外で興味深かったのは、タイの人々は自分の生まれた曜日をすごく大事にしているという話。日本人が血液型を気にするように、タイ人は曜日を大切にしていて、曜日ごとでラッキーカラーや、仏像のポーズが決まるのだそうだ。会場には、自分の生年月日を入れると曜日の計算が自動的にできるようになっており、私はちなみに水曜日でした。なぜか水曜日だけ日中と日没の2種類あり、ラッキーカラーもポーズも全く異なっていて面白かった。多分私はお昼に生まれたと親から聞いていた気がするのでラッキーカラーは緑だろう。(日没はちなみに黒だそうです。)
今回はタイに焦点を当てているが、日本との関係性を章立てに含めていることに感心した。江戸時代なんかだと貿易も盛んに行われていて、タイをシャムと呼んでいた。現地に行くと、日本人町なんかもあったりして関係は強かったことが伺える。
ここでは、アユタヤ―に渡り日本人町の頭領をしていた山田長政の肖像画や、貿易船の様子が描かれた図、安全でちゃんとした商人の印である朱印状などが展示されている。当時は、タイで制作されたとされる日本刀(タイ刀?笑)の展示なんかもあり、私達が思っていた以上に、古くからつながりがあったようだ。
展示室で唯一写真が撮れる作品がある。
それが≪ラーマ二世王作の大扉≫!!
天井付近にまでそびえ立つ、金色に輝く大きな扉。日本とタイで修理を行い、修理後に初めて公開された貴重な展示。よく見ると、扉にはぎっしりと植物や動物が立体的に彫られていて面白い。
しかも、厚い扉に深く彫ってあり、かなり重厚感を感じる扉だ。当時はこの技術を誰にもマネされないように、完成したら、使った道具を全て川に捨てたという話も残っている。
扉の裏側も撮ってみた。
画面真ん中よりも、下に人の顔が描かれているのが確認できる。
章立ても、タイから日本との関係性までメリハリがあって面白かった。仏像も間近で見れて大満足。
平成館の仏像コーナーも今回の仏像に共通するようなものも多数展示されていて、日本の仏像との比較もできてよし。タイ展の最後に涅槃像が展示されていたが、平成館にも同じポーズの仏像が横たわっていた(写真は平成館の仏様)。
帰りのミュージアムショップで、みうらさんオリジナルのタイ展特製マスキングテープを購入。色合いがかわいいな。さっそく自分の金ぴかノートに貼ってエキゾチック感を出してみた。
今回の企画展は比較的、開催期間が短いのでお早めに。タイの様々な方向から文化を知ることの出来る展覧会でした。