SEITEIリターンズ!!~渡邉省亭展~―加島美術
渡邉省亭―少し前までは「知る人ぞ知る絵師」だなんて言われていたけれど、最早「知る人ぞ知る人達だけでこっそりと楽しんでいた作品」が「色んな人に知れ渡ってしまい遠い存在」になってしまうのも時間の問題となっている。
美術史の教科書に掲載されたり、美術史における価値が確立されれば、瞬く間に画廊で売られている作品の金額は跳ね上がり、展覧会を開けば大勢のお客さんが押し寄せてしまうかもしれない・・・。一部のウワサでは「ポスト若冲」とまで言われている明治時代の絵師に焦点を当てた展覧会。
実は印象派とも接触していて、ドガのために「ドガース君へ」だなんて書いたドガのために描いたとされる絵も残っている。日本だけでなく、ヨーロッパにも渡った省亭は一体何者なのだろうか。長い間歴史に埋もれていたこともあり、最近になって研究が始まったばかりのまだまだ秘密が掘り出せる、大注目の絵師。
今年は明治維新から150年と節目ある年ということもあり、日本各地では様々な明治時代にフォーカスを当てた展覧会が開催されているけれど、加島美術では去年も省亭展を開催したらしい。明治時代の作家に関する展覧会も山ほど行われてきたけれど、150年の節目を迎えた今、明治時代の隠し玉をどどんと広める良い機会なのかもしれない。
渡邉省亭に関しては、大学の授業でかじったこともあって、他の人よりかは微妙に知っている(つもりである)。
授業でやったからにはと、齋田記念館の省亭展も前期後期で見に行ったし、赤坂離宮の「花鳥の間」にある省亭が下絵を担当した七宝焼きも見ている。山種の某個人蔵のあのきれいな牡丹の作品もチェック済み。
確かに細かいし、野鳥は生き生きと描かれていて省亭の評価はもっとされるべきだとは思ったけれど、いまひとつ、まだ本当の凄みが分からないまま月日は流れていった。今回の加島もきっと、先生が「絶対行くべし!」と言うだろうから行かなくちゃ・・・と思いながら行ったら、今回の省亭展でようやく、ようやく!凄みを理解したような気がしました。
加島美術の展覧会は今までの美術館で一番作品との距離が近かった。ガラスケースもないので、結構ギリギリまで近づいてみることが出来る。近づいて見ることが省亭の凄みを知れる決め手であったんだと思う。
齋田も良かったけれど、ガラスケースでちょっと作品を遠く感じてしまったんだよね。加島でギリギリと近づいてみることで、色の鮮やかさや迫力を思う存分感じる事ができて、今まで以上に生き生きとした省亭の作り出す花鳥の美しさを感じ取ることができました。
ちょっとハロウィンみ、ある。
あっ!この牡丹、山種の作品と同じモチーフだし、構図も似てる!
省亭といえば、個人的には迷いなくまっすぐ自由自在に引かれる美しい線も注目しているんだけど、とにかくまっすぐな線は何となく後半生になってから作品によく表れているような気がしないでもない。
また、今回の作品は全体的に色味のある鮮やかな作品が多かった。花も色とりどりで春夏秋冬を目で楽しむような季節感溢れる作品が微笑ましくて、愛おしかった。思わず「かわいい!」といってしまうような愛くるしい作品も何点か。
春を思い起こす二点。
このハチのぷりぷりしたお尻がかわいかった・・・・。
この画廊は二階にも展示スペースがあって
こんなにカッコいい展示をしている。
床の間で飾るとこんな風に見えてくるんだね。
手間の七宝作品は省亭と赤坂離宮の花鳥の間でもタッグを組んだ濤川惣助が七宝を制作している。左側の花瓶には菖蒲と白鷺が施されているんだけれど、この七宝職人、濤川惣助は本当に手作業でこの作業行ったの!?というか機械も到底無理でしょ!とびっくりするくらいの超絶技巧の持ち主。
花瓶も掛け軸も元々は「飾る」目的として制作されているわけだから、当時の人はどんな風に使っていたのかが個人的にはいつも気になる。菖蒲の花瓶に活ける花はやっぱり菖蒲なのだろうか・・・・・。
皿や茶器だって、元々は実際に使用していたわけなんだし。美術館や画廊では本来の目的とは別に展示されている、これは仏像なんかにもいえることだけれど展示された作品を見ながら、当時の使用していた頃を想像しながら見るのはおもしろい。想像力をかきたてる空間でした。
省亭の見事な菖蒲を絶妙なグラデーションで花を生き生きと花瓶の中で生かしている。明治の工芸は毎回驚かされるなあ・・・・。
ポスト若冲と言われる所以は、単に沢山の鳥や植物を描いただけではなくて、自然の営みを「自然」に表せた技術が評価されているのだろうな。あとちょっと変人なところも通ずる。(私の知っている省亭の人柄といえば、銭湯が大好きで風呂桶にお湯を何杯も汲んで、風呂桶をずらりと浴場に並べ、桶を片っ端から自分にかけまくる、というのを好んでいたのを明治時代の文献で読みました・・・変なの・・・・)
見ごたえたっぷりな省亭の展覧会。図録も販売されていて一冊800円。表紙の省亭の雁にショッキングピンクを合わせた斬新な表紙がロック。
9月29日まで。